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  • 2014.03.25 Tuesday
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書評・香山リカ・「悩み」の正体 〜処方箋なき解析〜

評価:
香山 リカ
岩波書店
¥ 735
(2007-03)

またもや香山リカ。なんだかんだいって結構読んでいるなあ。


多分、現時点での最新刊「しがみつかない生き方」
その章立ての妙もあって興味深く読んだ。

しかし本作「「悩み」の正体」は、なんだか新聞のコラムを読んでいるような
何とも言えない距離感がある。
もちろん、この手の本に具体的で即物的な解決法を求めることが、
正しくもないし、安直な振る舞いであることは嫌々ながら知っている。
本を含む情報は、知識の段階を経て、
血肉となる知恵となって初めて教養となり、
心の糧なり指針なりと昇華するのだろうし、
実用書の類でないならそれはなおさらなはずだ。
そのバイパスを回避してしまった極北が、

人格改造マニュアル



なのだろう。

香山リカの本を手に取り、購う人は多かれ少なかれ、
文字通り「悩みの正体」を知りたいと切実に願う人だろう。
本屋や、図書館で、溢れんばかりの書籍の中で、
それを選ぶのは、他のジャンルの本を選ぶのとは違う切実さがあると思う。
答えが欲しい。解が欲しい。
頭痛がするのでドラッグストアに赴くのと、本質的には変わらない。
しかし、そのドラッグストアで頭痛のメカニズムを店員に説かれたら?


例えば、本書「1.嫌われるのが怖い」中の
”場の空気が読めなかったらどうしよう”で、
場の空気を読むことを過剰に意識し、
同化しようとする大学生のやりとりを評して、

 こうなると、対話もコミュニケーションというよりは
 ”空気を読み合うゲーム”になってしまう


として、「少数派になるのが怖い」という思いが、顕著であるという。
その場その都度で、カメレオンのように人格構造を作り変える人を
精神分析学者のH.ドイッチェの定義する、「かのような人格」と
定義したことを挙げ、現代社会で生き延びるには、
「かのような人格」を繰り返すか、少数派になるか、
どちらが有利かと問う。
そして、

 そもそも、誰に強制、管理されているわけでもないのに、
 自ら進んで自由な自分でいること、自分の意見や考えを
 自由に発言することを放棄し、場の空気を読み合って
 まわりに合わせることだけにエネルギーを
 使っている現代人が目指す
 「自分にとって有利なゴール」とは、いったい何だろう。
 

と、結ぶ。

僕はむしろ、「何故、少数派になるのが、かように怖いのか」を知りたい。
現代人が目指す「自分にとって有利なゴール」が、
どのような結末を迎えるのかを知りたい。


また「5.いつも不安が消えない」中の”気分に浮き沈みがある”では、
「ちょっと前までは「最高」だった気分が、何かのきっかけで「最悪」になる」
症状の人に精神病理学者の内海健の著書から、
「大きな物語が失墜したあとのポストモダン社会の病」と
いう一節を引用したうえで、

 社会から「大きな物語」がなくなった今、
 一定した感情や気分を保ち続けるのは、
 誰にとっても困難なことだ。とはいえ、感情や気分は
 あくまで主観的なものであることを忘れずにいれば、
 その時の自分の目に映し出された世界を
 「これこそ唯一無二の現実」と思い込み、
 「だから会社をやめるしかない」、「もう離婚しかない」
 「今日こそは徹底的に相手を攻撃してやる」と
 極端な結論を出すことぐらいは、避けることができるだろう。

 
と説く。


「感情や気分はあくまで主観的なものであること」は自明だ。
しかし、そのことは「その時の自分の目に映し出された世界」を
いかに生きるかを示す解でも道標でもない。
知りたいのはまさにその「解」なのだ。
さらに言えば、知りたいのは「大きな物語」とは何かだ。
そして、「大きな物語」は現代に必要なのか否か。
他のもので代替は不可能なのか否か。
それはもしかして宗教なのか?

 *ちなみに、「5.いつも不安が消えない」中の
 ”自分は誰にも大切にされていない”においては、
 
 「私は誰からも見捨てられている」という思いが消えない人のために
 人間は宗教という最大の叡智を生み出した。
 
 と筆者は書いている。

 

 
明快な解があるか否かはともかく、一番考えさせられたのは
「6.まじめに生きてきたのに」の”おとなになりたくない”だった。



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診察室に来る若者の「おとなになりたくない」という訴えに対し、
若者自身が程度の差はあれ、「おとな」である肉親などの庇護の
下にあるという矛盾に筆者は着目し、その矛盾を自覚しているからこそ、
「満員電車に揺られて通勤するサラリーマン」に象徴される
「おとな」を過度に軽蔑しながらも、
一方で「自分はそのつまらない平凡な生き方すらできない」という
恐れを抱いてると考える。
そして若者の「平凡ではない」という現状と、
「平凡以上」のみならず、「平凡以下」であるかもしれない恐怖が
競合した結果、失敗を恐れて、「平凡ではない」という現状を
選んでいると分析する。
このような『永遠の少年』に、
(ユング派心理学者 フォン・フランツ「永遠の少年」を引用)
「現実の中に降りて行け」と、”下降”の必要性を訴える。
 
 
 「おとな」になることはやはり”飛翔”ではなくて、”下降”なのだ。
 しかし、”下降”は本当は敗北でもなければ恥でもない。
 逆に、「僕だけはけがれなき存在さ」と
 現実を見ることを避けて孤独のうちにとどまり続けると、
 知らないうちに自尊感情は目減りして行き、
 他者に対して配慮や思いやりを持つ余裕や寛大さも失われていく。

 
 
個人的には僕は、「おとな」になることを積極的に拒否したことは
思春期以降はない。
ましてや自分を「けがれなき存在」などと思ったことはない。
ただ、「自分はそのつまらない平凡な生き方すらできない」という
強迫観念は少なからずある。
そもそも「平凡な生き方」というロールモデルは、
いつまで存在していたのだろうか。
豊かな時には、「個性」、「自分らしさ」を持たずは
人にあらずといった風潮が幅を利かせ、
「平凡な生き方」などというものは存在したとしても、
影が薄く、恐れる前に公言するのがはばかられるような、
魅力のない言葉だった気がする。

そして時代は変わった。
ただでさえ実態の見えない、定量化も触れることもできない
「平凡な生き方」そのものが、経済的な側面から蝕まれ、
挙句の果てに、
「普通に生活できる人間が今、日本にどれだけいることか」などという
セリフで萎縮を迫りつつ、もはや手に入れるのすら困難に思えるそれを
息が続く限り、奪い合えと声を大にして叫び続ける。
「満員電車に揺られて通勤するサラリーマン」としての僕は、
常にその萎縮を感じ、その叫びに詰問されていた。
「平凡な生き方」という曖昧で反論不可能な積み木を必死に探しては積み、
その積み木を補強するために、さらに曖昧な積み木を積み、積まれた。
”キャリアアップ”、”自己啓発”、”目標管理”、”異動願い”、”英会話”。
そして山のような実用書。
それで?積み木はどうも崩れかかってる。
誰のせい?もちろん、流行りの「自己責任」。
「平凡な生き方」。「人並みの生活」。
その言葉自体が、外部が時代や状況に合わせて、
恣意的に意味や価値が変質することが
自明なのに、いまだに僕はその言葉に恐怖する。
どこまでも続く呪縛。
せめてもう少し分かりやすい物差しを。
せめて自己肯定できる何かを。
せめてチャンスを。
せめて心休まる何かを。

正確には、僕を含む若者達が抱く恐怖は、
「平凡な生き方」自体のロールモデルの不在、
実現の困難さ、そしてどこまでも続く呪縛の強制から起因した、
「社会の影響を極力受けたくない」という内向きの思いであり、
「社会の歯車になりたくない」という陳腐な言い回しでは表現できない
”何か”ではないか。
 
本書は言う。 

 しかし、”下降”は本当は敗北でもなければ恥でもない。
 
 
”下降”は、本当に敗北でもなければ恥でもないのだろうか。
その証しが欲しい。
そもそも、”下降”の過程でも、
他者に対する「配慮や思いやりを持つ余裕や寛大さ」は、存分に疲弊する。
もし「配慮や思いやりを持つ余裕や寛大さ」が換金可能ならば、
多くの人はそうするだろう。
 
 
 しかし、いま必要なのは、「おとなになるのは”飛翔”」ということでも
 「少年のままでいよう」ということでもなく、
 「”下降”しておとなになるのも悪くない」 というメッセージを、
 これからおとなになる人たちに伝えることではないだろうか。
 そのためにも、
 「”下降”しておとなになり、人生をけっこう楽しくやっている人」が
 もっと自分を世間でアピールする必要がある。
 居酒屋で酔っ払って上司の悪口を言っているばかりが、
 ”下降”したおとなの姿ではないはずだ。

 
 
知りたいのは、まさにその、
「”下降”しておとなになり、人生をけっこう楽しくやっている」という、
ロールモデルだ。
知りたいのは実現方法と、そしてどこまでも続く呪縛からの脱し方だ。
充分、「おとな」になるとやらの代償は払った気がする。
だからその答えが欲しい。
 
 
 
 
 
 
 
 
深刻極まる問いに対する答えなど、
もしかしたら書物の中にはどこにもないのかも知れない。
しかし、”「悩み」の正体”を分析するだけにとどまらず、
さらに踏み込んで欲しい印象を抱いた。
その思いを外にすれば、考えさせられる個所は何箇所かあった。
 
 
 しかし、幻のような「やりがい」のために、せっかくがんばっている
 今の自分を否定することはない。
 おそらく、「生きがい」も「自分らしさ」も
 「よく考えてみたら今がそうかもしれない」とゆるやかに
 気づくようなものであって、 「これだ!」と強烈な実感とともに
 訪れるような種類の感覚ではないのではないか。
 ヒリヒリするような実感を伴う「やりがい」がないからと言って、
 決してあせることはない。
 もしかするとそれはもう、とっくの昔に手に入っているかもしれない、
 という可能性も一度、考えてみてほしい。
 
 「2.無駄が許せない」中・”やりがいが感じられない”より

 
 
 「いじめ」に加担する子どもたちは、
 「次は自分が標的になるのではないか」という不安やおびえを抱え、
 「とりあえずこの子をいじめているうちは、
 自分はいじめられることはない」と
 目の前の”いけにえ”を激しく攻撃することで、
 その不安を隠蔽していることが多い。
 
 「1.嫌われるのが怖い」中・”他人の失敗が許せない”より

 
 
 
 
 
 
すぐには出ない答えであることは知っているけれども
憂鬱でしかたがない。
こんな文章を書いているうちに、日付は変わっていた。




女性上位時代



 Thank you
 ゴキゲンなキスしてくれてサンキュー
 憂鬱な気分は晴れないけど

 Funky
 真夜中のラジオは音楽と
 憂鬱なニュースで溢れてる

 ふたりで抱きあっているうちは
 地球はとにかく廻っているから

 Funky
 真夜中の街はとてもファンキー
 世界中愛を囁いている

 Thank you
 ゴキゲンなキスしてくれてサンキュー
 憂鬱な気分で死にたいけど

 お金もないしね お腹もすいたし
 地球はとにかく廻っているけど

 こうしてふたりで抱きあっているうちは
 地球はゆっくり廻っているから

 このままふたりで抱きあっているなら
 世界の終わりさえ 気付かないかもね


 「サンキュー」PIZZICATO FIVE
(作詩:小西康陽 作曲:小西康陽)






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  • 2014.03.25 Tuesday
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コメント
TBありがとうございました。

香山リカさんの本は、いつもトレンディだけど
何か物足りない気がしますね。
>honyomiさん
はじめまして。3amopと申します。

>香山リカさんの本は、いつもトレンディだけど
>何か物足りない気がしますね。

そうですねえ・・・。
なんというか社会的にタイムリーな病巣に関しては
すごく敏感な人だとは思うんですが
「じゃあ具体的にどうしろと?」となると、
何か、当たり障りのない説教みたいな印象を受けます。
もっと、紙数を割いて一つのテーマに
突っ込んだ本も、読んでみたい気もします。
honyomiさんのブログでの、
>今風の悩みの羅列に終わっているように
>感じるのが少し残念。
という言葉に尽きます。

ブログ拝見しました。
とても興味深く読んでいます。
勝手ながらリンクに加えさせていただきました。
コメントしようと思ったのですが
「アメーバ会員からのみコメントを受け付けています。」とのことで、会員になろうか否か迷っています。(笑)
今後とも当サイトをよろしくお願いいたします。
  • 3amop@「はじめまして」
  • 2009/11/17 9:30 PM
すみません、
「アメーバ会員からのみコメントを受け付けています。」こういう設定になっているとは、私も気がつきませんでした。
一応、変更しましたので、お気が向いた時にでも書きこんでくださいね。
(また、スパムが多くなれば、変更するかもしれませんが。。)

また、LINKに加えていただき、ありがとうございました。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。



>honyomiさま

お返事遅くなりました。
すいません。お手数おかけして。。。。
ちょくちょく、閲覧させて頂くつもりなので
こんごともよろしくお願いいたします。
  • 3amop@「ありがとうございます。」
  • 2009/11/29 8:46 PM
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