calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< May 2017 >>

categories

archives

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 2014.03.25 Tuesday
  • -
  • -
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

書評・雨宮処凛・「生き地獄天国」〜「居場所」はどこに〜


評価:
雨宮 処凛
太田出版
---
(2000-10)

先日図書館に行くと、雨宮処凛(あまみやかりん)の処女作・「生き地獄天国」が文庫化されて棚に納まっていた。


雨宮処凛の著書に関しては以前にも書いた。
(参照・「書評・雨宮 処凛「すごい生き方」−肯定された「逃げる」ということ−」ttp://3amop.jugem.jp/?eid=761
いま改めて自分の記事を読んでみても、その本にかなり衝撃を
受けていたことが分かる。
「息苦しいのは社会のせいだ!逃げろ!」と極言する
ラジカルな本なんて滅多にお目にかかれるものでない。
しかもそこには何のこけおどしもギミックもなかった。
要するにただただ圧倒されたのだ。

雨宮処凛のプロフィールは多少説明が必要かもしれない。
1975年、北海道生まれ。
イジメ・リストカット、ヴィジュアル系バンドの追っかけを経て
右翼団体へ。その後極右バンド「維新赤誠塾」のヴォーカルへ。
その後、自伝となる「生き地獄天国」で作家レビュー。
現在は右翼団体及び「維新赤誠塾」を退き、
フリーター、パート、派遣、請負etc
不安定化する若者たちの労働現場を
大企業側に糾弾する活動をメインに行っている。
(http://www3.tokai.or.jp/amamiya/profile.htm)

世代も僕と似ているし気になってはいたが、彼女の処女作である
本書・「生き地獄天国」には随分長い間、食指が動かなかった。
特に前半部に語られる彼女の体験はちょっと重すぎた。
図書館で見つけたとき、やっぱり少し躊躇したが結局、借りてみた。
やはり本書は強烈な読後感を残した。
イジメ体験、ビジュアル系バンドの追っかけ、自殺未遂、胃洗浄、
右翼団体加入を経て極右バンド結成。
北朝鮮とイラクに渡航、そして右翼をやめて今に至るまでの
雨宮処凛の壮絶な半生の軌跡だ。

雨宮処凛は14歳のときからずっとずっと居場所を探し続けていた。
彼女の気持ちを代弁してくれると思えるのは
ヴィジュアル系バンドだった。
服を黒づくめにして、髪を染め、
同じバンドのファンや追っかけの少女達と
交友を持つことで初めて、「自分の居場所が見つかった」と
感じることができた。
学校で良い成績を取ることだけで
親からの承認を得ていたと感じていた彼女は
自分のせっかく見つけた「居場所」を失わないために
親に壮絶な暴力をふるい、家出を繰り返す。
好きなヴィジュアル系ミュージシャンとの即物的なセックスで
自分を必要としてくれていると錯覚する日々。
そんな日々に疑問を抱いて美大受験を志し、
人形を作るという目標も達成できないまま、
今の自分とそれを取り巻く周囲への憎しみ。
破壊衝動は自殺未遂という形で現れる。
そんな時1995年3月はやってきた。
オウム真理教による地下鉄サリン事件だ。
彼女は20歳。

 「私が待っていたことってこういうことだったんだ!」
 「あの人たちなら、私の気持ちを分かってくれるに違いない。」
 「あの人たちなら、私の大嫌いな世界を燃やしてくれるのに違いない」



JUGEMテーマ:気になる書籍


確か僕はその事件が起こったころ、予備校生だった。
朝のテレビ。地下鉄の入り口で座り込み人。倒れている人。
沢山の救急車。ヘリの爆音。
母に先に出勤した父の安否を確かめるように行った覚えがある。
父は幸いにもすでにオフィスで、このニュースに冷静に接していた。
最初はヨガのサークルから始まった宗教グループが
未曾有のテロを犯した瞬間だった。
センセーショナルに騒ぐマスコミ。
不穏な噂と怯え。
近所のエスニックバーで、サリーを着る女性店員は、
オウム真理教の道布に間違われ、
好奇と警戒の目で見られていたことを苦笑混じりに話していた。
地下で行われるクラブイベントですら
オウム襲撃の噂がたったほどだ。
そして不謹慎すぎる冗談。
しかし、その噂と冗談に興じていた僕を含む当事者には
本当に「セカイの終わり」を待ち望む思いが、
全くなかったと言い切れるだろうか。
同時代を生きた者として、雨宮処凛の思いは想像可能だ。
そして「居場所」としての宗教が、ある歪んだ光と熱を帯びたとき
他者を排斥するものとして機能することを皮膚感覚で知った。


その後、雨宮処凛はサブカルチャー周辺の人士と交流を持ち、
漫画家・山田花子が何故自ら命を絶ったについて思わず叫ぶ。

 「でもなんで自殺しちゃったんだろう・・・・」
 「そうだよ!山田花子は立証したんだよ!」
 「何を?」
 「何をって・・・・」
 一瞬、みんなが口ごもった。私は思わず叫んでいた。
 「だって、こんな世の中、シラフで生きて行けって言う方が無理じゃん!」
 

この科白は何だかとても僕の心に刺さる。
大なり小なり何かに依存したり、信じたり、所属したり、
自我を殺したりしないと
とてもとても世の中は怖い。
シラフで世の中を生きていくことは、
どこまでも自由ではあるがどこまでも孤独で不安だ。
個人的な話をすると、僕は一応クリスチャンだ。
しかし未だにカミサマとやらを感じることができない。
過去の短くない時期、宗教を含めた色んなものに
依存しないように生きてきたつもりだった。
何となく違和感を感じつつ、
でも変人扱いされる勇気もないので
付き合ってる振りはしていた。
それがいつの間にか、頼れるのは自分だけ、
少しでも自分のキャリアを磨いて、もっといい待遇へ、
もっともっと遣り甲斐をという風に、
どっかの転職支援会社の広告を鵜呑みにしたかのように
最初の思いはすり返られ、焦ってた。
就職氷河期世代にはありがちな話だろう。
結果、大きなしっぺ返しを食う羽目になった。


 誰のせいでもなくて イカレちまった夜に
 あの娘は運び屋だった 夜道の足音遠くから聞こえる
 誰のためでもなくて 暮らしてきたはずなのに
 大事なこともあるさ あぁ 天からの贈りもの

 UP & DOWN UP & DOWN SLOW FAST SLOW FAST
 UP & DOWN UP & DOWN ナイト・クルージング
 窓はあけておくんだ
 いい声聞こえそうさ

 ナイト・クルージング/fishmans

ほんと、「誰のためでもなくて暮らしてきたはずなのに」。
未だに大事なことはよく分からない。


「私は生きる意味がほしい。生きる目的がほしい。
そしてそれを遂行する壮大なドラマがどうしても、今すぐにほしい」
雨宮処凛はある右翼団体の集会に参加し、その演説に衝撃を受ける。
彼女を苛んできた「腐りきった戦後日本」は激しく全否定され、
「いいか!時代を変えるのはオマエだ!」という
演台からの叫びは彼女を奮わせる。

 「私は間違っていない!間違っているのは時代の方だ!
 私を認めてくれない、必要ともしてくれない時代の方だ!」

なんて甘美な響きだろう。魅力に耐えがたい言葉だ。
そう。宗教だけではなく政治もまた人に「居場所」を与え、
安らぎを与える。少なくても没頭している間は
どこまでも自由でどこまでも孤独で不安な感覚とは無縁でいられる。
それはナチスも生むし、テロリストも生む。
それでも僕を含めた人間はそれを時に求める。


 凡庸者ほど非凡に憧れ、その一方で、
 非凡ゆえの孤立に堪えられずに
 理解者や救済者を求めるのだ。
 私には、よく分かる。自分がそうだから。
 この私自身が、凡庸を憎む凡人の極みであるだからだ。
 (略)
 人が「凡」を嫌悪しながらも「凡」に帰属したがる。
 その矛盾した願望のなんと根深いことか。
 『2001年宇宙の旅』のコンピュータHALは
 矛盾した命令を与えられたため発狂したが、
 人間もまた同じである。
 件の妄想者は、ちょうどいい居場所を見つけたのだ。
 「一水会」という組織に属することで安心感を獲得し、
 その一方で「自分は天下国家を語る人間である。
 そこいらの凡人とは意識が違う」という
 特別感をも得られたのだから。
 「大いなる凡庸である世界の中の、
 小さな特別組織の中に居場所を見つける」というスタンスは、
 このような人間のナルシシズムを満たす。
 宗教も思想も、そういう意味では、同じ役割を担っているのである。

 中村うさぎ「うさぎが鬼に会いにいく」より。
 *「一水会」とは反米の立場を持つ理論派右翼団体。


結局彼女はその後その団体に参加し、疑問を抱いて脱退した。
そしてエピローグで彼女は言う。

 私は、いかに手首を切らずに、そして今よりはマシな精神状態で
 生きていけるかってことを追求して、依存を繰り返していただけだ。
 そして、その果てに今、
 生まれて初めて”本当の自由”の中に放り出されている。
 だけど別に、それはそんなに恐れるものじゃなかった。
 もしかしたら、私はずっとこんな状態を待ち望んでいたのかもしれない。
 でも、遠回りしなかったら、
 私の足は恐怖にすくんでいただろうことも分かる。
 そう、思い切り遠回りして、そしてジタバタしまくれば道は開ける。
 そのことを私は身体で覚えてしまった。


過激すぎる紆余曲折を経て得た境地。
「本当の自由」とは何かは未だに僕には分からない。
しかし彼女は言う。
「ジタバタしまくれば道は開ける。」
僕はどうジタバタすれば歩き出すことができるだろうか。




スポンサーサイト

  • 2014.03.25 Tuesday
  • -
  • 23:59
  • -
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

コメント
久しぶり。

先日(数日前)六本木一丁目の泉ガーデンタワーで3amopさんにクリソツの人を見かけました。相当ジロジロと見たのだけど、ソックリ過ぎて気になります。




  • K瀬
  • 2009/01/26 10:45 AM
>K瀬

激しく久しぶりw。
元気でやってる?まだ在職?

>六本木一丁目の泉ガーデンタワーで3amopさんにクリソツ

俺ではないなwwww。
ジロジロ見るなよw
今度、写真でも撮ってきてくれw

  • 3amop@ドッペルゲンガー
  • 2009/01/28 3:30 AM
そうか・・・残念。あれは絶対にそうだと思ったのになぁ。
  • K瀬
  • 2009/01/28 9:23 AM
この本持ってます。笑
札幌では有名なバンギャだったみたいで
○○の追っかけだったとか、話は色々周りから
入ってきております。

去年の夏、洞爺湖サミットにもデモ隊として
洞爺にいらっしゃっていて、○翼系のネットTVで
中継していたので観てましたよ!

北海道のローカルニュースでも、彼女の事を
とりあげている番組がありました。
  • E
  • 2009/03/26 2:19 AM
この本持ってます。笑
札幌では有名なバンギャだったみたいで
○○の追っかけだったとか、話は色々周りから
入ってきております。

去年の夏、洞爺湖サミットにもデモ隊として
洞爺にいらっしゃっていて、○翼系のネットTVで
中継していたので観てましたよ!

北海道のローカルニュースでも、彼女の事を
とりあげている番組がありました。
  • E
  • 2009/03/26 2:19 AM
>Eさん。

この本、お持ちですか。
かなりヘヴィーな内容なので読了するのに
結構体力が必要でした。
北海道では有名人なのか。知らなかった。
いまや雨宮さんは労働問題の旗手ですものね。
右○から○翼系への変換って
相当な振り切れ方だよなあ。
すごく好きな作家ですが、読むと必ず凹むので
なかなか買うまで勇気が要ります。(笑)

THABLUEHERBといい、雨宮処凛といい北海道出身は
言葉が濃い。

何はともあれ、
当サイトを今後ともよろしく願いします。
  • 3amop@道産ジャンヌダルク
  • 2009/03/26 6:42 AM
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック