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  • 2014.03.25 Tuesday
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書評・林あまり「スプーン」


評価:
林 あまり
文藝春秋
¥ 1,500
(2002-04)

以前読んだ歌集、「ベッドサイド」が1998年初版。本書・「スプーン」は2002年か。


「ベッドサイド」は今読み返してもみずみずしい歌に溢れていた。


「まず性器に手を伸ばされて悲しみがひときわ濃くなる秋の夕暮れ」

「首すじをゆるくかまれてあ、とおもう間もなくあふれはじめる涙」

「夢のつづきのようなつもりのベッドでも事実としての髪の毛が残る」

「心弱いときの交わりいつもより会話に支えられて果てる」

「唇に移るぬくもりふくらんだあなたを口に含む花冷え」

「夜を朝に闇を光に変えること借りるべき手はこのひとではない」


とてもとてもエロティックで少し残酷な視点。
(前にも書いたが)女性という、僕ら男性とは対極の性から見た愛の営みは、
こんなにも隔絶しているものなのか。
胸を打つとともに慄然とした。


本書・「スプーン」は「ベッドサイド」よりはセンセーショナルではない。
二人だけで始まって終わる、満ち足りているようで何かが足りなくて切ない世界。


「くちづけで起こされるのはいい気持ち 朝ならもっとうれしいだろう」

「ひどいめにあったのだろう恋人は 仕事の話はひとつもせぬが」

「傷ついているほうが上で抱く いくつも冬を越えたふたりは」

「眠っているあいだに雪が降り始め もう一度あたためあって帰ろう」


「二人」ではないとき、歌の中の彼女を取り巻くものはほろ苦い。
索漠と焦燥が薄くベールのようにまとわりつく。
時間は残酷に公正に過ぎていく。


「時計の針はあんなに動いてこの書類ちっとも理解できないままだ」

「この姫を送り届ける馬車はなく あいそのわるい深夜のタクシー」

「だいすきな少女と話せぬまま帰るむなしさのように 年月が経った」

「日程を決めない限り かなわない大人の遊びはどれひとつとして」

「老後ひとりはさびしいからと手にさえも触れず」結婚しようというひと」


そしてまた二人だけの世界へと彼女は戻る。どこか寂しいのに微笑ましくさえある。


「コートのポッケに入れてつなぐ手 うきうきと冬の夜道を歩き続ける」

「どこに飴が入ってるか知っているあなたに バッグは預けられない」

「あけわたすことのよろこび 服を脱ぎ 向きあうわたしの相手はこのひと」

「なぜ、なんてわからなくていい 結婚も出産もせずここにいること」


「わたし」と「あなた」の二人は、甘く、
確かなものがない世界と関係性の中で
ゆらめくように生きている。
不安は足元に口を開いているが、お互いの体温だけが、
信じるに唯一値するものであるかのように
歩み、抱き合い、二人の時間を純化して行く。
そんな感じが少し胸を打った。


JUGEMテーマ:読書



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