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  • 2014.03.25 Tuesday
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DVD(書)評・「嫌われ松子の一生」--

日本文学科卒の癖に、新刊本が並ぶ書店を覗くことは結構ストレスがある。


新刊本のコーナーに行けば、「国家の品格」?
「のだめカンタービレ」?
さほど興味はないが、時代に追いていかれそうだ。
文芸書ばっかり読んでていいのか?
フラフラとビジネス書コーナーへ。
「コーチング」?
「日本版SOX法?」?
あー。勉強しなければ。

だから僕はBOOKOFFがわりと好きだ。
流行りモノ「だった」ものを冷静に品定めできるから。
「失楽園」やら「セカチュー」がたな晒しになっている光景は
なかなかの見物だ。

中谷美紀主演映画の原作。
そのフレーズがなければBOOKOFFで
「嫌われ松子の一生」を手に取ることはなかっただろう。
作者である山田宗樹
知らない名前だった。
大体「ミステリ」というジャンルは先入観がある。
貧乏性なので、趣味である読書ですらも
「何か得たい」、もしくは「何かを癒されたい」という
気持ちが先走る。

嫌われ松子の一生
嫌われ松子の一生
山田 宗樹

帯の重松清の評ではないが、「一晩で読了した」。
主人公である川尻松子のその数奇な人生と転落。
数十ページごとに綴られる劇的かつ負のドラマ。
「転落」の恐怖は、いつだってあったが
こうも鮮明に、詳細に語られるとは。
本を閉じた時、奈落に落ちたような感覚だった。
まず、原作「嫌われ松子の一生」は面白かった。
本当に。
スピーディな展開とショッキングなエピソード。
これが「ミステリ」というジャンルの特徴なのか?
(あまり読み慣れないジャンルなので分からない)

主人公である川尻松子は教師として働く。
しかしトラブルがあり失踪。
自称作家との同棲。暴力。そしてその相手の死。
不倫。
そして風俗へ。
ヒモと同棲。殺害。服役。(以下略)

「身をもち崩す」。
古風な表現だけど、それがピッタリする。
読み手の一部は笑うだろう。

「そこまで悲惨な人生ってそうそうないって。」

本当に?僕は笑えない。
あんたは男だからそんなこと言えるんじゃないの?
あんたは女なのにそんな想像力もないの?
あんたと僕がまだ「マトモ」なのは偶然なだけだよ。
ありふれた三面記事の表面は
「悲惨な人生の残滓」で埋もれてるじゃないか。
中高校時代のクラスメートの一人や二人、
そんな人生歩んでる奴がいないって保証はできる?
読んだ後に僕の足をすくませるのは
そんな”残滓”への「想像」。
自分の人生が恐ろしくなった。

ストーリーは東京で大学生活を送っている川尻笙に
父が訪れる所から始まる。
父にとっての姉、笙にとっては叔母である川尻松子。
彼女が最近東京で殺害されたことを笙は聞かされる。
父の頼みとは自分の代わりに、
松子の部屋の後片付けをして欲しいとのことだった。
笙と恋人の渡辺明日香は、松子が何を思い生きてきたかに興味を持つ。
笙は松子が歩んだその人生に衝撃を受けることになる。

その翻弄される人生の初盤で川尻松子は思う。

 「わたしは、唇を噛んだ。悔しくて目を伏せた。
 泣くものか。ただそれだけを思った。」(第一章 骨)

その強い意志は感動的だった。物語の後半に至るまで。
そしてどんなどん底においても
幸せを希求し、ついに果たし得なかった主人公。
ただただ「誰かに愛されたい」、「自分の居場所が欲しい」
だけだったなのに。

 ここでわたしは、他のパートタイマーや上司を驚嘆させることになった
 この三連ベルトコンベアを、苦もなく使いこなしてしまったのだった。
 (略)生まれて初めて、自分の能力を存分に活かし、
 それが周りに認められているという実感を持てた。(第二章 流転)
 
トルコ風呂(現在「ソープランド」という名の風俗店)に
勤めだしても同様だった。
帰り間際にトルコ風呂『白夜』マネージャである赤木から
努力の末、売り上げトップになったことを松子は聞かされる。

 「経験したこともないほどの充実感が、指先まで満ちていった。」(第二章 流転)

そして自殺未遂をした時に助けてくれ、関係を持った
島津との生活を夢見るがゆえの、刑務所内での美容師資格取得への挑戦。

どんな状況でも、決して目を逸らさずその場所その場所で
ひたむきに努力をする。
松子はそんな人間だった。なのに。
最後の松子が迎えた人生の結末は、ひどかった。

そして松子殺害の容疑を裁く裁判所の傍聴席で
笙は、「ついでにちょっとからかってやろうと思っただけで」と
言う犯人に向かって叫ぶ。

 「おまえら、自分が何をしたかわかってんのかよ!
 からかったぐらいで人が死ぬかよ、
 松子伯母さんがどんな気持ちで・・・・・・・おまえらなあっ!」(終章 祈り)

失踪してから家族に縁を切られた松子を死後
笙は彼女を理解した。多分川尻家で唯一。
しかも本人が死んだ後に。

読後感は、松子の人生に対する真摯な姿勢と
それが報われなかった残酷さ。それが胸を突いた。
「頑張ったって報われるとは限らない。」
そんな言葉がのしかかった。
エンターテイメント性と重さ。
相反するものが感想だった。

嫌われ松子の一生 通常版
嫌われ松子の一生 通常版
中谷美紀

映画版。脚本・監督は「下妻物語」が出世作の中島哲也。
中島哲也に中谷美紀はかなり厳しく指導されていたらしい。

先に断っておくと僕は中谷美紀の大ファンで。
「中谷美紀が今度主演する映画」だから原作を読んだはずで、
観たときからそんなに時間が経っていないことは確かだ。
そうだ。BONNIEPINKが挿入歌をてがけているのも
大きかったはずだ。

LOVE IS BUBBLE
LOVE IS BUBBLE
BONNIE PINK,Youichi Murata

彼女にしては珍しいビッグバンド形式。
彼女のアンニョイな曲調が好きだった僕は、新鮮な驚きをもって聴いた。
悪くない。

中島哲也はこの悲惨な物語をアニメやミュージカルシーンも交え
カラフルかつコミカルに描く。
ほんとうにすごい。
原作の多少の省略はあれども忠実になぞりつつ
かつポップ。
いやまあ所々、目を背けたくなるシーンはあるけど。
(映倫・PG-12指定・・12歳未満の鑑賞には成人保護者の同伴が適当。)
川尻松子の波乱万丈の人生を2時間強に詰め込んだから
ストーリー展開も早い早い。
5分おきぐらいに松子の人生が変わってくといっても
過言じゃないぐらいだが、せわしさはない。

どうしてこんなにも中谷美紀は美しいのだろう。
エプロン・けばけばしい水商売の姿・囚人服etcetc。
本当にどんなスタイルでも。
それだけでも観る価値がある。
松子が筑後川を最後に訪れた以降の

「もう誰も信じない。もう誰も愛さない。もう誰も自分の人生に立ち入らせない。」

と独白した頃、川尻松子晩年の
あまりに鬼気迫るメイクと衣装が
正直、中谷美紀のファンとしてはキツかったけど。
本当に美しくキュートだ。
ミュージカルシーンで踊り、泣き、笑い・・。
その表情のひとつひとつがまるで彫刻みたいに
ゆるぎない美を感じる。

そして女優・中谷美紀の迫真の演技。
妹の死を告げられたときの嗚咽。
自分の人生が狂うきっかけになり、
そして最後に愛した男、龍洋一に
殴られあざがついた顔のまま
ネグリジェだけの姿で泣き叫ぶシーン。

「もういい!もうなんでもいい!あなたの好きなように生きなさい!
 もう二度とヤクザをやめろなんていわない!
 あなたが極道ならあたしは極道の女になります。あなたのそばにいられるなら・・」

映画「嫌われ松子の一生」は
中谷美紀の代表作になると思う。

脇を固める俳優陣も、無駄なく贅沢に豪華。

龍洋一(松子の元教え子):伊勢谷友介
川尻久美(松子の妹):市川実日子
八女川徹也(小説家志望のヒモ):宮藤官九郎
小野寺(松子に刺殺されるヒモ):武田真治
島津賢治(松子の自殺未遂時に出遭う美容師):荒川良々
綾乃(トルコ嬢):BONNIE PINK

BONNIE PINKなんかセリフ二つだけ。
でも、その幸薄げな美しい存在感がハマっていた。
武田真治なんか三分で殺されてた。


エンディング。
松子が最後に住んだアパートに近い荒川の河川敷と
故郷の筑後川を交互する空撮と回想。
そして松子が一番汚れのない頃の姿で天上の階段をゆっくりと上っていくシーン。
中島哲也らしいファンタスティックな演出。
自らが望んだ父親の愛情を一身に受けたがゆえに
憎んでいた妹を許し、「ただいま」という松子。
原作にない「救い」があったと思う。

原作における最後の法廷シーンをカットしたことは
いいことだったのか分からない。
ただ原作で笙によって叫ばれる、松子の死に対する怒りという
「愛情」(多分、松子が一番欲しかったもの)は
映画ではより美しく与えられてる気がする。

原作者の山田宗樹をこれから自分が追っかけるかは
分からないけれど、中谷美紀と中島哲也の作品はたぶん追うだろう。

カテゴリを「DVD・映画」にしようか「読書」にしようか迷ったけど
中谷美紀に敬意を込めて「DVD・映画」に。


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  • 2014.03.25 Tuesday
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  • 09:48
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コメント
論評楽しく拝見しました。
小説から読もうか、映画から見てみようか悩んでしまいます。

聞いていたとおりきつい内容みたいですが、どちらも最後には救いがあるんですね。
ちょっと安心しました。

BONNIE PINK、私も好きです。
今よりはデビュー当時のちょっと影がある感じが好きだったんですが・・・


それにしても3amopさんの文章は先が読みたくなる文章ですね!
うまく表現できない自分がもどかしいですが、
次の更新も心待ちにしてます。
  • 2007/04/06 10:05 PM
羊さんこんばんわ。

>論評楽しく拝見しました。
論評にも「拝見」するだなんてそんな大層な・・(冷や汗
恐縮です。

>小説から読もうか、映画から見てみようか悩んでしまいま>す。

原作と映画の位置づけって難しいですよねえ。
「原作のほうがいい。雰囲気壊すな」、
「いや映画の方こそ新解釈」etc。

でも「嫌われ松子の一生」は原作・映画両方
それぞれの世界観があって感情的な相反はあまり
起こしにくいかなあ。と。まあ私見ですが。

>BONNIE PINK、私も好きです。
>今よりはデビュー当時のちょっと影がある感じが好きだっ>たんですが・・

はい。同感です。

>それにしても3amopさんの文章は先が読みたくなる文章で>すね!

恐縮&感謝。結構思い入れのある作品なので
長くなってしまって、「ちょっとまずいかな」と思ったのですが。一日原稿を寝かして推敲した甲斐があります。

>先が読みたくなる文章で

どのへんだろうwご教示いただけば幸いです。

ちなみに検索したらこんなサイト見つけました。
どうもすごく映画への造詣と観察が深く、
その是非はともかく
「とてもかなわないな〜」と思いました。

映画よりも面白い 『嫌われ松子の一年』
http://umikarahajimaru.at.webry.info/200606/article_9.html
  • 3amop@「拝見なんて(恐縮)」
  • 2007/04/07 3:02 AM
私はDVDを借りてきて、じっくり観ました。
3amopさんのお陰でやっと原作も読んでみたくなりました。
実は、本が先か映画が先かいつも迷います。今までは本で読むのが先だと、映画を観た時に勝手に自分の想像してたモノとは全く違って、がっかりする事が多かったり逆もそうだったんでどちらかだけと決めていたんですが、『裁判のシーンなんて知らない!』今、読まないともったいないと
思っています。
原作も、映画も良かったと(松子の最後は別として)
思える気がしています。
人によると思いますが、自称作家が死んでしまうシーン‥私は似たような体験をしているから共感したのかも‥(苦笑)その頃は見返りなんて期待せず、まぁ自己満足の様な感じはありましたが本気で幸せなんです。後々、考えると??と思うんですけど私の場合、『この人を駄目にするのは自分なのかも』と、気付くのに4年かかりましたが‥
また、新しいモノ教えてください。私は、本屋さんへε=┌(´; ・ω・`)┘行きます。長文で失礼しました。
  • parfumee
  • 2007/04/07 3:23 AM
>parfumee さん
こんばんわ。(もう明け方だわw)

>3amopさんのお陰でやっと原作も読んでみたくなりまし
>た。

すごく嬉しいです。
自分が好きなものを他人も「好き」って言ってくれるのは
稀なので。
(サブカル街道を一人で行った大学時代が原因?)

>『裁判のシーンなんて知らない!』今、読まないともっ
>たいないと

そうなんです。松子の甥の笙も映画では単なる狂言回しですが、原作ではかなり掘り下げられた描写があります。
個人的にはトルコ風呂のマネージャである赤木の
松子への不器用な愛は映画でも
取り上げて欲しかったのですがw

>、『この人を駄目にするのは自分なのかも』

胸に刺さる。。。今の僕の彼女は今年で30歳。
こんな病気背負って彼女を幸せにするなんて
遠い夢の話のようです。

>また、新しいモノ教えてください。私は、本屋さんへε=>┌(´; ・ω・`)┘行きます。長文で失礼しました。

いや、諸般の都合により一年(以上)遅れの
「新しいもの」を駄文で紹介することしかできません、w



  • 3amop@「原作と映画の差異」
  • 2007/04/07 3:54 AM
たびたび失礼します。
「新しいモノ」は、ホントに新しくなくていいんです。その方が私には合ってますんで‥大きく宣伝されたものを観て何度失敗した事か。お恥ずかしい事ですが、今だに「ロード・オブ・ザ・リング」も見たい気になっていませんし、「ゴースト」も「千と千尋の神隠し」も皆が泣いたと言う部分でも泣けなく、逆に泣くとこあった?と(良い作品とは思いますが) あの「ジュラシックパーク」は、パッケージが似ていた「チキンパーク」というパクりにTSUTAYAで騙され(間違えたのは私)、それ以来絶対観てやるもんかと思っています。好きなモノは、何度も観ていますが、私こそ周りとズレてるんで大丈夫ですから。

胸に刺さってしまう様な事書いてごめんなさい。
文章にするのが下手なんで誤解されたと思いますが、『女心』です。もし、同じ事を思うとすれば彼女かなと。それもきっと無いと思います、私の場合は甘やかしヒモの様な人になっていても イイと思わせてしまってましたから(なんかカミングアウトしてしまってる‥)
反対に浮気性の彼を変えて見事に子供ベッタリの“良きパパ”にした友達もいますから(^.^)b

また長々と書いてしまいましたが、古くても「新しいモノ」待ってますよぉ。
  • parfumee
  • 2007/04/07 7:10 AM
>parfumeeさん
こんにちわ。

>今だに「ロード・オブ・ザ・リング」も見たい気になってい>ません

僕もです。なんか「アカデミー賞」系な作品って
偏見があって観る気がしないんですよね。
「スターウオーズ」も未だに観る気もしないし。
どうも一回「メインストリーム」の嗜好から
ズレると後々まで尾を引くみたいです。
(音楽も映画も)


>「チキンパーク」というパクりにTSUTAYAで騙され

ググってみました。

http://www.vega.or.jp/~bazil/junkvideo/chikipa.htm

>この作品に480円以上出す価値は余りない(笑)

メタクソですねww。

http://72.14.235.104/search?q=cache:ol64VkeXMxIJ:page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p64888629+%E3%83%81%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AF&hl=ja&ct=clnk&cd=7&gl=jp

「映画の歴史は変わらない。チキンパークでは変わらない」

いいコピーだwww。ちょっと観たくなってきたw。

>胸に刺さってしまう様な事書いてごめんなさい。

いえいえ。こっちが勝手にヘコんでるだけですからw。

>私の場合は甘やかしヒモの様な人になっていても イイと>思わせてしまってましたから

その方は男冥利につきますね。
男性に女性から求められるのは、「リードしてくれる」頼りがいが常ですけど、意外と男性は甘えたい人も多いかと思います。
ちなみに昨日彼女に電話してその話題になったとき
「十分甘やかしてたつもり」といわれましたw。

ちなみに
「クズビデオ49日」
http://www.vega.or.jp/~bazil/junkvideo/junkvideo.htm
お勧めですw。
  • 3amop@「甘えとか母性とか」
  • 2007/04/07 2:06 PM
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