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  • 2014.03.25 Tuesday
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書評・「なんとなくな日々」−@美容院

予約してしまったものは仕方が無い。億劫なのを堪えて近所の美容院に行く。


いつも担当してくれていた、柴咲コウ似の同じ歳のスタイリストは
先月末で結婚退職してしまったらしい。

新しい担当の女性は心なしか緊張しているようだった。
見慣れない顔なので、多分辞めたスタイリストの替わりに
雇われた娘なんだろう。

僕のいつもの注文、−襟足を短く、できるだけボリュームを減らして、
後ろへ流れるようにパーマをかけて−を伝えて
僕は川上弘美の「なんとなくな日々」を開いた。

なんとなくな日々
なんとなくな日々


あとがきで川上弘美は、
 
『でも、エッセイって、ほ、ほんとのことを、身辺のことを、
 機知にあふれたことを、か、書かなくてはいけないんでしょう。
 そんなものは、か、書けっこないじゃありませんか
 (わたしは緊張すると、舌がもつれます)。』
 
と、謙遜しているけど僕にとっては読後感のよいものだった。
実在するORしないを問わず、通り過ぎる事象に対して
なんと、しなやかで長閑な接し方をする人なんだろう、そう感じた。
 
「幽霊だの怪異だのの話をする質ではない」友人が、
河童に遭遇したときの話を聞いて、川上弘美はこんなことを
書く。
 
『酒の席のこととて、そのうちに話題はあちこちに飛び、河童の話はそれでおしまいになった。
 ほろ酔いで家に帰る道すがら、私は河童のことを思った。
 姿を人間などに見られてはならないはずなのに、さては間違えてすれ違ってしまったんだろうか。
 さぞ驚いたことだろう。ぼちゃんと飛び込んだ瞬間に、水を飲んでしまったかもしれない。
 あわてて流されたかもしれない。幾日も、落ち着かない日を過ごしたことだろう。
 春で、浮かれ出てきたんだろうに。かわいそうな河童。
 いつの間にか、河童がいるものと決めていた。』
 (「春が来る」より)
 
なんて素敵な、゛なんとなくな゛日常を過ごす術を
知っている人なのだろう。
彼女を取り巻く彼女にしか体感しえない、ほんわかとした日々が
綴られた全185ページ。
この本を読み終えた週末は、いつもよりも少し心が和んだ気がする。
 
カットが終わった。
新しい担当のスタイリストは
僕の髪の毛をドライヤーではらい終えた後、
小さい声で「よし」と呟いた。
彼女が「よし」というのなら
出来上がった僕の髪型はきっといいものなのだろう。
僕は料金を払いその店を出た。
あとはビールを買うだけだ。

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  • 2014.03.25 Tuesday
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  • 20:52
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コメント
また遊びにこいよ。もっとこっちこいよ。
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気持ちとか感情とか感覚とかを、論理的に書くことは、本当にはできない、と私は思う。 いろんな、本当にいろんなものがくちゃくちゃに複雑に絡み合っていて、それでひとつの感情だから、誰もがわかるように論理を追って書こうとしたら、それはそのときに感じたある一
  • 一人暮らしの本読み徒然 // 感想というより戯言
  • 2005/03/06 10:24 PM